今朝、一時間ほどバイクでぶらぶらしてきた。
特に目的があったわけではない。たまには動かしてやらなければ調子が悪くなるからだ。
平日の移動は殆ど電車で行い、車も週に1度運転するかどうか。バイクはもっと乗らない。どうしてバイクに乗るのだろう。時々自分でも不思議になる。
バイクは「ない・ない・ない」の乗り物。
夏暑すぎて乗る気にならない
股前方30センチぐらいのところにエンジンがあり、シリンダー内で1秒間に数十回の爆発が起こっている。夏の暑い日、信号で停車中、エンジンとアスファルトの熱気が容赦なく体を襲ってくる。
ただでさえ半袖半ズボンでは乗ることのできない乗り物。体中から汗が噴き出してくる。前頭部の汗は顔をつたってあごに集まる。フルフェイスのヘルメットのその部分がヌルヌルして気持ち悪い。
真夏に手袋をしている人がどれだけいるのだろう。不快指数100%の中で私はバイクを走らせる。
冬寒すぎて乗る気にならない
時速60キロでバイクを運転すれば、風速60キロの風が体の熱を奪っていくということ。風が強く当たる部分、体の末端から冷えてくる。
手の指先、足、膝から太ももの前の部分にかけて。ゴアテックのグローブをして、靴下を2重にして、ズボン下を履き、ライダーズジャケットを着る。それでも寒い。30分も運転すればバイクを止めたくなる。
グローブをとると指先が真っ白になっている。膝がガクガクと震える。コンビニでホットコーヒーを買い、体中をマッサージして血を通わせる。生き返ったところで、また、私は寒空の下バイクを走らせる。
荷物をほとんど積むことができない
タンデムシートの下、車で言えばトランクに当たる部分の体積は、スマホ約1個分。車検証とETCのカードリーダーを入れるともう何も入らない。
大枚をはたいて買ったサイドバッグ。ファスナーを外して広げたとしても、詰める荷物は車の助手席におけるほどもない。タンデムバックは取り付けに手間がかかり、つけたらつけたで、普段の調子でバイクまたがろうとすると、右足がバッグにあたってしまう。自分の短足が恨めしい。
旅行先で欲しいものを見つけた時、訪問先の友人からお土産をもらう時、常にバッグの容量のことを考えている。車ならこんな心配をする必要はないのに、そう思いながら私はバイクを走らせる。
雨が降ったら乗る気にならない
電車での旅行は、1か月前に切符を買いに行く。車での旅行は、訪問先の天候によってプランを自由に変更できる。バイクでのツーリングは、ギリギリまで実行できるのかどうかわからない。
風を受けながら走る心地よさは、好天を担保としている。その前提が崩れると、心地よさは一瞬で不快さに変わる。それだけではない。雨天時のバイク走行は危険な事この上ない。少しの距離でもどっと疲れが出てくる。
普段は退屈なトンネルも、雨が降りだせば待ち遠しく、自分の味方に感じられる。降水予報が20%であっても、雨に遭遇することはある。降ってしまえばそれは100%と同じこと。自分の運の無さを恨みたくなる。それでも次のコンビニやバス停を目指して、私はバイクを走らせる。
全身を使わないと運転できない
車はミッションが好きだった私も、ここの所オートマ車に乗り続けている。MTの設定がほとんどないのだ。乗り慣れるとオートマ車は楽だ。基本的に右手右足だけで運転ができる。
バイクを運転するためには、体全体を使うことが要求される。両手でハンドル、右手でアクセルと前輪ブレーキ、左手でクラッチ、親指でウインカーとクラクション、右足で後輪ブレーキ、左足でギアシフト、両腿でニーグリップ、体全体での重心移動。
常に体の複数の個所を動かしながら走行する。止まったら止まったで、足で支えていないとバイクは倒れてしまう。カーブでは、アクセルとクラッチとギアをうまく合わせてやらないと、お尻がふれて倒れそうになる。なかなか面倒な乗り物だと思いながら、私はバイクを走らせる。
まだまだあります
主なバイクの「ない」について書いてみたが、「ない」リストはまだまだ続く。
- 人を一人以上乗せることができない。
- 運転しながら音楽を聴くことができない。
- 街中でバイク用の駐車場が見つからない。
- 高速道路では軽自動車と同じ料金を払わなくてはならない。
- バックすることができない。
- 最近はあまり人気がない。
- 頭や背中が痒くなってもかくことができない。
車と比較して、人や物を移動させるという実用性は明らかに劣っているのがわかる。
エアコンが効いた環境で、音楽が聴けたり、友人や家族と会話をしながら過ごせる車には、快適性でも劣る。
さらに、関心の低さからか、原付以外の駐輪場はあまりなく、有料道路では250ccでも軽自動車扱いをされてしまう。重さ150㎏のバイクに自動車重量税って何なんだろう。
肌の弱い私、バイクを止めてヘルメットをとったら、頭をポリポリ、背中をカキカキ。夏場は本当に痒くて痒くてたまらない。ヘルメットの上から頭をたたく。大して効果は無いけれど。
このように、「ない・ない」だらけの乗り物、バイク。
いいことないように見えて、そんなことはない。
いつも面倒な思いをさせられているが、結局は気にならない。
いろんな不便があるが、決して手放したくはない。
一言で言えば、可愛くてしょうがない。
ポジティブな「ない」も結構「ある」。