疲労感
木曜の夜、明後日更新するための記事を書き始めたが筆が進まない。理由の一つは体調がすぐれないためだ。
先週の木曜から風邪の初期症状のような感覚が続いている。若い頃の私は、こんな時いつも同じことを行なっていた。
ストレートのオレンジジュースをがぶ飲みし、厚着の上に2〜3枚布団を被せて寝るのだ。途中、暑さと発汗で目が覚めるのだが、水分をとり下着を変えて再び眠りにつく。
汗をかくことと風邪とがどう繋がっているのかは、今だに理解できないが、若い頃はこれで翌日にはすっきりと仕事に行くことができた。
「あれっ」と思い始めたのは40代に入ってからだ。この方法をもってしても、翌日に風邪の症状が持ち越されるようになったのだ。「これが歳を取ることなのか」と嫌が上でも感じさせられる。自信のあったやり方が通じなくなった時、人はダメージを受けるものだ。
50代に入った私は、もうこの方法を試すことを辞めてしまった。栄養のあるものを食べて、なるべく早く床につき、できるだけ長い時間体を休める。それでもなかなか疲労は消えてくれない。
「歳を重ねれば、そのうちこの状態がデフォルトになるのかも」そんな嫌な想像をしてしまう。こうなると元気がみなぎり、それが当たり前だと思っていた若いころがありがたくてしょうがない。
今回の風邪症状も、栄養をとって休養してもなかなかよくなってくれない。思い切って鼻うがいにも挑戦した。酒は、相変わらずの頻度で飲んでいるが、量は減らしているつもりだ。
昔タバコを吸っていた頃、風邪をひいても咳き込みながら吸っていた。今は、そんなことを考えるだけでも呼吸困難になりそうだ。
加齢のせいで治りきらないのか、それとも風邪以外の病気にかかってしまったのか。今月末に初めての人間ドックを受けるが、体調不良が続くようならその前に医者に行くことになるかもしれない。
追い討ち
疲労感が取れないのは体調のせいもあるが、それに追い打ちをかけるように心が疲れる出来事が続いた。
養護教諭が私のところに相談に来た。学校で行った視力検査の結果を生徒に返す際、結果が書かれた紙を封筒に入れるかどうかの相談であった。
私は、どこが話のポイントなのか、最初はよくわからなかった。
話を聞くと、彼女が心配していたのは、担任が結果を手渡す際に他人がその中身を見る可能性であった。
「見えたら何が悪いの?」
昭和生まれの私はこれ以外の反応ができない。しかし、視力の状態は重要な個人情報にあたるという。だから、他人に漏れないように最善を尽くした対応を行うべきなのではというのが彼女の論理なのだ。
担任が結果の書かれた紙を手渡し、生徒がカバンになおす十数秒間の漏洩防止を保証するために、数百枚の紙を封筒に入れる。これをBullshit Jobと呼ばずして何と呼べばよいのだろうか。
「私が責任を取ります。封筒に入れずにそのまま渡しましょう」
私がそう言うと、彼女は嬉しそうな表情を見せた。当たり前だ。普通の感覚の人間なら、そんなバカなことに時間と手間を使いたいとは思わないだろう。教育現場で私たちのリソースはもっと教育的なことに注がれるべきなのだ。
しかしながら、今回のことを笑えないくらい私たちの現場では、どうでもいいことに時間と手間を取られるようになった。
これも今週の話である。
ある教師が、私に確認をしてほしいと文章を持ってきた。その右上には校長名まで入っている。一体何があったのかと聞いてみると、生徒が問題集を失くしたというのだ。
生徒が問題集を紛失して、どうして校長名の入った文章が必要になるのか。彼女の論理は以下の通りである。
彼女は新たな問題集を教育教材業者に発注し、その冊子が今彼女の手元にある。冊子は子供が持ってきた現金と引き換えに受け渡す予定である。現金は一時的に彼女が預かり、業者が来校した折に渡す。
保護者に金銭を要求し、そのお金を一時的ではあるが自分の手元に置いておくことに対し、しかるべき手順を踏むべきなのだという。
「大変ですね」
私はそういった。あの文章を作成するのにどれだけ時間がかかったのだろうかと想像した。当然、この後あの文章は校長先生のところへ行くはずである。その時何か指摘されたら、またパソコンで打ち直し、プリントアウトしてもう一度見せに行くのだろうか。
彼女のことを笑うことができない。昔と異なり、今は教師が気軽に現金のやり取りをすることがない。仮にそういう状況になれば、バカ丁寧に行うことになる。そして、その丁寧さは鰻登りに上がっていく。
「問題集無くした?それならここに電話して買ってきなさい」
「そうか。あと少しだから友達のやつをコピーしてもらい」
「そうか。よく頑張ってるからな。これ1冊余ってるから貸してあげる」
私は時と場合と相手によって対応を変えていた。今はそれをすると、こちらの身が危なくなることもある。だから、私たちの現場ではどこまでもBullshit Jobが増えていく。
そんな現場に私の体調もすぐれないままである。

