三つの教え

プレゼント用貯金

ここのところ三年連続でオリジナルのTシャツを作っています。きっかけはいろいろありますが、私の中で一番大きいと思えるものは、以下に述べる三つが揃ったことでした。

三年ほど前、私はある投資家が書いた本を読みました。そこには日本人がいかにケチなのかが記されていました。アメリカの成人一人当たりの年間の寄付額は日本円にして約13万円です。一方、日本人のそれはわずか2500円だというのです。

私は思いました。「果たして自分は年間に2500円以上寄付しているのだろうか」。おそらくしていませんでした。私は自分がとてつもなくケチな人間に思えました。

それより少し前、私はベストセラーになった「夢をかなえるゾウ」という書籍を読んでいました。その中で、成功するための教えの一つに「コンビニでお釣りを募金する」というものがありました。

この本の主人公と同様に、私はこの時どうして成功とお釣りを寄付することがつながっているのか理解できませんでした。「成功」の大きな部分には金銭的に困らないということがあるでしょう。少額とはいえお金を手放すことがどうしてそこにつながるのか分かりませんでした。

投資家の本を読んだのと同じころ、私は「リベラルアーツ大学」という動画を知りました。両学長の教えが面白くて、毎日夢中になって見ました。その中に「幸福度を上げるためにはプレゼント用口座を持つとよい」というものがありました。

私の中で三つがつながりました。

「ケチな日本人にならないこと」「コンビニでお釣りを募金すること」「人にプレゼントをするためのお金を持つこと」です。他人のためにお金を使うことが幸福感を感じることに関係していると私の直感が告げました。

私は帰宅すると小銭入れの中のコインを貯金箱に入れるようになりました。この貯金箱のお金は自分以外のために使うお金です。最近は現金を使う機会が減ってきていますが、それでも1年間で5~6万円のお金が貯まります。

「どうせ家に帰ったらプレゼント用の貯金箱に入れるのだから」と、コンビニへ行くと自然に募金箱にお金を入れるようになりました。街を歩いていても同様です。交通遺児や難病治療を始めとして、世の中にはさまざまなことで困っている人がいます。

私は街頭募金を見るたびにお金を入れるようになりました。時にはコインだけでなくお札を寄付することも自然にできるようになりました。少額ですが妻を通じて福祉団体にも寄付を行うようになりました。

さて、貯金箱に貯まったお金ですが、私がワクワクする仕方で使わせてもらってます。その中の一つがオリジナルのTシャツを作ってお世話になった人に渡すことです。

オリジナルTシャツ

最初に作ったのは「簿記Tシャツ」でした。私は三年前に日商簿記の3級を取得しました。これもリベラルアーツ大学を見るうちに、簿記の大切さに気づいたことが始まりでした。妻と二人でスタディーサプリの動画を見て学習して受験、幸いにも二人とも合格しました。

この間、私たちに問題集や過去問を貸してくれたり、わからない部分を教えるなどして応援してくれた人々に感謝の気持ちを込めて簿記Tシャツを作りました。

写真は背中側のデザインです。「人生には借方・貸方が同じだけ起こる」ということを示しています。私が日商簿記3級を学習した中で一番よかったと思えることです。

貸方・借方の値は常に同じでなくてはなりません。ある勘定科目の反対側には同じだけの別の勘定科目が存在します。つまり、人生はトントン、いいことにも悪いことにも等しく価値があるということを教えてくれます。

このTシャツは10名の手元へ渡りました。

昨年作ったのは「サウナTシャツ」です。これは言うまでもなく、私がサウナーであるため作りました。頭にこのデザインが降りてきたので、すぐに手帳に書き留め、後にワードで作成しました。私に絵心があり、デザインソフトを使いこなせればもっと洗練されたデザインになったかもしれませんが、仕方がありません。

このTシャツは15枚作って私の周りのサウナ好きに配りました。私もサウナに行く時よく着ていきます。見る人が見ればその意味がすぐにわかるので、知らない人から声をかけられることがあります。

説明すると長くなるのでしませんが、このTシャツが縁となって30年前に数回会っただけの人(私の親友の高校時代の友人)と連絡が復活しました。サウナTシャツを作ってよかったなあと感じると同時に、人生って面白いなあと思います。

さて、今回作ったTシャツは相撲Tシャツです。「サウナの次は相撲かな」と漠然と考えていました。自分の頭の中を「私デスノート」に描いているうちにデザインが浮かんできました。

今年の初場所をもって隠岐の海が引退した時、「四股名に海が付く力士はどれぐらいいるのだろう」と思いました。大阪場所の十両以上で八人の力士に「海」がついていました。つまり「オーシャン」が付く力士が8人です。

私の中でサンドラ・ブロック主演の映画「OCEAN’S 8」とつながりました。映画はオーシャン氏を中心とする8人の物語ですが、こちらは土俵上の「海」の付く八力士がコンセプトです。フリーの素材で力士のイメージを配置し、その下に八人の力士から「海」を抜いた名前を記しました。

色は「OCEAN’S 8」のイメージカラーである赤と黒にしようと思いましたが、着てもらうことを優先して海をイメージした青にしました。

このTシャツは相撲の話をする同僚や、一緒にお酒を飲みながら相撲観戦する立ち飲みの常連たちに配布される予定です。

ありがたい

プレゼント用貯金を始めて、私の幸福感に明らかに変化が現れ始めました。それは「させていただいている」という感覚を感じるようになったことと関係しています。

これは以前の私にはなかった感覚で、違った自分になったようで不思議な気持ちになります。しかし、本当に募金や寄付やプレゼントを「してあげている」というより「させていただいている」と思えるのです。

世のなかには貧困や難病で苦しんでいる人が山のようにいます。そして、現在の私はその対極の世界に住んでいます。募金や寄付を行うとき私はこう思います。

「私はこのお金を差し出す側にいてよかった」

私はお金を受け取る側ではないのです。私が手放しても私の生活の質に何の変化も起こさない程度のお金を、募金箱に入れたり送金したりするだけです。

しかし、受け取る側にはそのお金に対して圧倒的なリアリティーが出てきます。場合によっては私が寄付したお金によって生死が決まります。人によっては命を左右するだけのお金が私の財布の中には入っていて、それを少し手放したところで私の懐は痛みません。

「私は圧倒的に恵まれた世界に生きている」

飢えたことも、親を事故で失ったことも、津波に襲われたことも、ロシアの砲弾に脅えたこともなく、日々お酒を飲み、サウナを楽しみ、相撲を見て楽しく過ごしています。

募金を行なう度にそんな恵まれた私の姿が再認識させられるのです。言い方は悪いのですが、私は困っている人の存在によって自分が幸福な位置にいることを確認しているのです。そう考えると「している」ではなく「させていただいてる」と思えます。

プレゼントにしても同様です。私がプレゼントを考えて渡すということは、当たり前ですが「渡すことができる人がいる」ということです。それらの人々は、私に対してすでに何かを与えてくれています。

どういうことでしょうか。

簿記Tシャツを渡したいと思える人は、自分の時間やエネルギーを使い私に簿記を解説し受験を応援してくれました。サウナや相撲も同様です。彼ら、彼女らの貴重な「時間」=「命」を使って私に付き合ってくれているのです。私の人生はこれらの人と好きなことの会話をしたり、一緒に体験したりすることで彩りを増しているのです。

私が自分一人のためにTシャツを作り、それを着て街に出ても何の面白味もありません。私の今までの人生のどこかで、私は共通の話題を話せる人たちと出会いました。そして、私はそれらの人々にプレゼントをしたいなと思えるようになったのです。私はそういう人を持つことができているのです。単純なことに見えますが、とても豊かでありがたいことだと思います。

プレゼントをもらった人は喜んでくれます。たかがTシャツ一枚で飲みに連れて行ってくれたり、特産品を送ってくれたりするので申しわけなく思うこともあります。やはりここでもプレゼントを「している」のではなく「させていただいて」います。

「ケチな日本人にならないこと」「コンビニでお釣りを募金すること」「人にプレゼントをするためのお金を持つこと」

私の中でつながった最初の3つのことです。これらを実践することで私の幸福感も増しています。さすが世の中に影響を与える人の言った教えだと思います。一見「本当にそうなのか?」と思えますが、行ってみるとじわじわと効いてきます。

まだ少額ですが、これからも私はこれらの教えを続け、幸福感を上げていきます。

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投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。