日帰りで遊びに行ける大阪で開催されるというのに、大相撲人気のためチケットが手に入らず、今場所は指をくわえてテレビで観戦することになった。
とはいうものの、今回も時間に追われ散発的にしか見ることができなかった。どうしてだろう。いつも3月は授業がないからゆっくりテレビ観戦できると思いながらそれができない。
この現象、私の考え方と行動様式の根本的な部分と関係していると思わずにはいられない。そしてこの根本が、私が日々感じるモヤモヤを作りだしていると考えるのが自然であろう。
そんなわけで断片的ではあるが、三月場所で感じだことを記すことにする。
がんばれヒール
前回の大相撲の記事を投稿した後、一つ書き忘れたネタがあることに気がついた。十両の剣翔についてである。
数年前、おふざけで大相撲力士をプロレスに例えて遊んだことがある。関取たちをベビーフェイス(善玉)とヒール(悪役)に分けるのだ。
ルックスがよくて華のある飛猿や若隆景はベビーフェイスで、強面の松鳳山や千代丸はヒール役である。そしてヒールの中でもトップに立つのが剣翔である。理由は子供の頃見ていた時代劇の悪代官とつるむ悪役商人に彼に似た顔がよく出ていたからである。
そんな剣翔が一月場所を迎える前、ニュースになった。結婚したというのだ。客室乗務員のとても美しい方である。「どうして力士の奥さんは例外なく綺麗なんだ」と相撲好きの仲間と話し合った。
世の中のカップルたちをルックスという点で見ると、おおよそ釣り合いが取れているのがわかる。例外ももちろんある。しかし例外だらけなのが大相撲界である。そういった意味で力士たちはルックスのよくない男たちに希望を与える存在であり、剣翔はそのフロントラインに立っている。
先場所6勝9敗と微妙な数字だった彼の今場所の成績は15連敗。負けても負けても土俵に立ち続けたが、白星を掴むことができなかった。今場所、西十両12枚目なので五月場所での幕下陥落は避けられない。
それでも頑張って相撲を取り続けてほしい。私を含めてイけていない男たちを励ましてほしい。来場所、私にとってのベビーフェイスは剣翔である。
壁
「5勝したら4年ぶりに関取になれる」
その思いを胸に、私は毎日午後3時ごろスマホで幕下の結果を検索した。
「ああ、今日もまたダメだ。次は頑張れ」
ため息が続いた。負け越しが決まった。それでもなんとか2勝した。来場所はまた幕下の深い位置へ逆戻りしそうだ。
令和4年5月場所、春日野部屋の栃丸が十両昇進を果たした。入門から11年である。関取にならずに廃業する力士がほとんどであるのだが、日の目を見るまで11年頑張った栃丸はすごいと思った。
「石の上にも三年 栃丸十一年」
私は職場や馴染みの立ち飲みでこの言葉を多用した。栃丸の似顔絵にこの言葉を添えたTシャツを作ろうと、下書きを行った。栃丸は三場所で幕下に転落し、Tシャツは作られることな買った。
あれから四年、西幕下6枚目で迎えた今場所、関取が射程圏に入った。
「もう一度土俵入りできたらうれしだろうなあ」
私は栃丸に共感した。しかし、今場所ではそれは叶わなかった。
現在33歳。もう一度栃丸の化粧まわしが見てみたい。
スパイス
「調子が悪い」
周りの相撲好きもメディアもこのように表現するが、私は今までが信じられないくらい良すぎただけだと思う。今場所一番注目された安青錦のことである。
去年の成績は68勝22敗。一年で十両から大関まで一気に駆け上がってきた。その間11勝以下の場所はない。あまりに急激な出世なので、周りの関取がついていけなかたのだろう。
それでも取り組みのデータが揃うと、取り口の研究が行われる。一番注目を浴びている力士は、一番分析されていることだろう。そうなると安青錦にとって得意なことがやりにくくなる。
「今場所でもし優勝したら安青錦にとってよくないのでは」と私は思っていた。あまりに順調に行きすぎることが、彼が長く相撲界で活躍するためにならないと考えるからだ。
注目、研究され、それに対抗する心と技術と体をどのように作っていけばよいのか、彼は悩むことだろう。しかし、それを親方や仲間と共に考えて、動いて、克服することが彼を次の次元の力士にするのだと思う。
安青錦にとって今場所はスパイスであった。それだけ経験すれば美味しくないが、他と組み合わさった時、なくてはならない引き立て役になる。
何度もスパイス場所を経験し、それを克服することで豊かな風味で味のある関取に成長してほしい。
その他もろもろ
・翠富士が心不全で休場。「心不全」の言葉にヒヤリ。力士にしては痩せたあの体でも、そんな病気になることを知る。無理をしながら相撲をとり、私たちファンは何も考えずにその上に乗っているのだ。ありがたく、申し訳なく思う。
・藤の川の取り組みが楽しみである。アナウンサーも解説者も絶賛する。勝負にかける気迫と表情が他の力士よりも一段強い。一生懸命を見るのは気持ちが良い。ずっと応援したくなる力士である。
・十両4枚目の尊富士がなんとか勝ち越した。おそらく来場所も十両。優勝した二年前の三月場所のことを思い出す。「ここにいる力士じゃないだろう」と思うが。ケガを含めコンディションを整えることの難しさわかる。
・四日目の王鵬対琴勝峰の取り組み。何度も当たる頭と頭。付き合って、いなして、血を流し、ふらふらになりながらも勝負が続き、土俵際の一瞬に意外な展開で勝負あり。解説舞の海さん「これだから相撲は面白い」、一緒に見ていた妻も「面白かったー!」。
・「現役時代、体が小さいから負けたと思ったことはなかった。まだ勝ちかたを知らないんだと思っていた」。舞の海さんの名言を私デスノートにメモした。
・千秋楽、三段目優勝決定戦で久しぶりに生田目を目にする。恵まれない環境で育ったという話は、私を贔屓目にさせる。彼を見ていると「この顔を喜ばせたい」という気持ちになる。
・高安、豪の山、生田目は、引退後脱毛のコマーシャルに使ってもらえないかと、今場所でもそんな不謹慎なことを考えた。こうなると、相撲の内容よりも力士の毛深さに目がいくようになる。