令和六年九月場所

大相撲が好きになって以来、九月場所があるから夏休みが終わる寂しさに耐えられると思うようになりました。そんな心待ちにしていた九月場所も一瞬で終わってしまいました。

7月場所は時間休を取るなどして、幕内の取り組みをかなりテレビで観戦することができましたが、この場所はそうはいかずに休日を除いてほとんど観戦できていません。

ハードディスクレコーダーの中には大量の取り組みがたまっているのですが、やはり物事には旬があり全ての取り組みが終わった今から見る気にはなりません。

私の相撲観戦に関しては不完全燃焼感が強かった今場所ですが、それでもいつものように気付いたことを記してみたいと思います。

来年の今頃は

好角家の同僚から「すごいの入ってくるで。横綱になるかもしれん」と聞かされたのは去年の夏でした。私は学生相撲についてはよく知らないのですが、ここ数年大きな注目を浴びていた力士で、そのプロへの入門が期待されていたと言います。そう、大の里関のことです。

去年の初めは名前すら知りませんでした。五月場所で初土俵を踏むと九月に関取になり、十両をふた場所で終えると今年の初場所と三月場所で11勝、五月場所で初優勝を決めて関脇となりこの九月で二回目の優勝を決めました。小結になって以来の直近三場所は34勝で、今週水曜日の理事会で大関昇進を決めました。

なんだかできすぎていて夢を見ているような気持ちになります。5年10年かけてようやく関取になる力士も多い中、わずか1年半で大関です。野球界でいえば大谷選手のような特別さを持った力士だと思います。

先のことはわかりませんが、現在の上位陣との対戦成績を考えると順当にいけば来年あたり新しい横綱が誕生するのかと、期待してはダメだと思いながら思わず期待してしまいます。

潔さ

女優の常盤貴子さんの名前を新聞で目にした時「常盤山」部屋の「貴景勝」の顔が頭に浮かんできたというネタを書こうと思っていましたが、今は寂しくてそんな気分になれません。

まだ若いししばらくは兵庫県を代表する関取でいてくれているだろうと期待していた貴景勝関が引退を表明しました。馴染みの立ち飲みにも応援する常連さんが多く、もう一緒にお酒を飲みながら声援を送ることもできないのかと思うと寂しくなってきます。

去年の九月場所では四回目の優勝、1年前は念願の綱取りに向けて出発したばかりでした。人の境遇など本当に予測できないものだと思いました。

私は引退のインタビューを歩きながらラジオで聴きました。相撲道に対する真摯な情熱と潔さが伝わってくる感動的なインタビューでした。力士にしては小柄な身長で大関の地位まで上り詰めるのは相当な努力と苦しみがあったと思います。

「昭和の先輩に教えていただいた武士道精神を持った、根性と気合いを持ったそんな力士を育てていきたい」

「根性と気合い」とは今の時代には全く合わないコンセプトですが、彼の口からその言葉が出ると納得して応援したくなってきます。湊川親方としての活躍を期待しています。

兵庫県勢

場所が終わり十両を休場していた妙義龍関も引退を表明しました。貴景勝関と比べると報道的な扱いは小さかったのですが、それでも地元の神戸新聞にはちょっとした記事が掲載されていました。

2009年夏場所に幕下付け出しで初土俵。10年初場所で新十両、ケガで番付を下げた後11年名古屋場所で十両復帰、その後数年間が大関候補とされ最も輝いた時期であったと記事には記されていました。

私が大相撲を見始めたのは2018年ごろですから妙義龍の一番活躍していた時期を知りません。ただ貴景勝や照強と同じく兵庫県出身の関取なので意識的に応援していました。この三関取の結果は、場所開催中にNHKのローカルニュースで毎日放送されていました。今回二人引退したことでニュースのそのコーナーはどうなってしまうのでしょうか。

兵庫県勢の幕下を見てみると何度も十両復帰を果たした北播磨関が上位にいますが、今場所1番しか勝てず来場所は大きく番付を下げそうです。

東幕下八枚目高田川部屋の大辻は3勝4敗で場所を終えました。20歳とまだ若いのでこれからが期待されます。

私が注目したのは高砂部屋の朝興起で、西幕下五十五枚目で6勝しました。順調にいけば初場所で関取も狙える位置にいます。彼は出身が妙義龍と同じ高砂市です。

再び兵庫県の関取を見られる日を楽しみにしています。

プレッシャー

春日野部屋は関取を維持している期間が他のどの部屋よりも長く、1935年以来それが続いています。栃ノ心が引退し、栃武蔵がケガで番付を下げた今場所で、その伝統を背負っていたのが東十両十三枚目の碧山関でした。

私が相撲を見始めた頃は前頭の上位が多く、大きな体を真っ赤にして相手を圧倒していた碧山ですが、三十代も半ばを過ぎて土俵を割る相撲が多くなっていました。まだまだ現役姿が見たかったのですが、今場所で大きく負け越し先日引退が発表されました。

千秋楽の十両での取り組みで碧山は幕下の琴手計に敗れました。勝てば十両残留の目もあったかもしれませんが、これで碧山の幕下陥落は決定的になりました。

私はこの取り組みをラジオで聞いていました。「春日野部屋の伝統も終わりか」と思いましたが、その直後の取り組みで幕下筆頭の栃大海が十両の木竜皇を破り4勝目をあげて十両昇進が確実となりました。

春日野部屋の関取の伝統は首の皮一つつながりました。こういった伝統、力士にとっては相当プレッシャーだと思います。自分の見ず知らずの人たちが作ってきたものの中に、ある日投げ込まれて今度はその当事者になるのですから。

しかしプレッシャーになり苦しい反面、守るべきものがあることで力が出せる面もあるかもしれないので一概にどうこう言えないでしょう。

個人的には序二段陥落から再び番付を上げ続けている栃丸関に頑張ってほしいです。今場所西幕下三十六枚目で5勝2敗。来年あたり、私はまたあの好きな言葉を言いたいです。

「石の上にも三年 栃丸十一年 そこからまた三年」

先取りしようと思って

今場所が始まる前に私は久しぶりに裁縫を行い、オリジナルのTシャツを作りました。私にとって四種類目となる大相撲Tシャツです。理由はこの場所で大きく注目されるであろう力士を先取りしたかったからです。

Tシャツの題材にしたのは伊勢ヶ濱部屋の聖富士、熱海富士の付人で入場前に熱海富士の肩を揉む姿がよく写し出される力士です。

「関取の多い伊勢ヶ濱部屋で揉まれてそのうち上がってくるだろう」と思っていましたが今場所の番付表をみるとなんと幕下筆頭、これはすぐに行動しなければと思いハサミと糸を手にしました。

真ん中の富士山に刺繍された”HOLY”が「聖」を表しています。色は聖富士が関取になったらこんな色のしめこみが似合うのでは、という想像で選びました。ちなみに左側は尊富士、右側は熱海富士を表しています。

その聖富士の成績ですが私の期待に反して2勝5敗に終わってしまいました。幕下上位は、長い大部屋生活に別れを告げたい力士、返り十両に付け出しが競い合う番付の中でも最もギラギラとした場所であります。そんなに簡単には上に上げてくれなし、聖富士もここでの苦労があとで効いてくると思うのです。

これからTシャツを着るには寒い季節がやってきます。来年の大阪場所は羽織った長袖のインナーにこのTシャツを着て聖富士の十両土俵入りが見られたらいいと思います。

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投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。