令和六年十一月場所

いつもの雑感です。

旭川に・・

場所の途中で長年NHK大相撲放送で解説をされた元横綱北の富士さんの訃報が入ってきました。

私は相撲が好きになりこれから一生大相撲放送を見るつもりなので、いつかはそんな知らせを聞く日が来るのかと漠然と思っていましたが、こんなにも早くその日が来るとは思いませんでした。

実は初日の幕内土俵入りの後、NHKの解説者が「今場所、北の富士さんは休みです」とアナウンスしました。私はそれを聞いて少し安心しました。もう一年以上休まれていたけど、そのようにわざわざアナウンスするということは、北の富士さんがいることが前提になっているからあり、もう出る見込みがないのならそうしないと思ったからです。

客観的に見れば横綱まではった力士が80歳を越えることは稀で、北の富士さんは長生きしたということができるかもしれません。しかし、あの向正面舞の海さんとの掛け合いがもう聞けないと思うと寂しくてたまりません。

二年ほど前でしょうか、放送中に故郷の北海道旭川に自分の墓を買ったというようなことを言われていました。北に帰られる北の富士さんをいつか訪問したいと思います。

単語カード

大相撲の会場で2時15分ごろと3時40分ごろに特別なイベントがあります。それぞれ十両、幕内土俵入りです。関取たちは色とりどりの化粧回を身につけて、それぞれ東と西の花道から土俵へと入ります。大相撲に入門したしたすべての力士が憧れる瞬間です。

今場所、初日の十両土俵入りを見ながら私は「今の私にとってこれは英語の暗記カードのようなものだ」と感じました。どういうことでしょうか。関取が土俵入りする際は、四股名と出身地・所属する部屋がアナウンスされます。

私はテレビの画面で力士が映し出された瞬間「朝紅龍、大阪府出身、高砂部屋」とアナウンサーに先立って私が一人アナウンスし、直後の本物のアナウンスで答えを確認します。そして、十両力士は下からの入れ替えがあるので、時々顔と四股名と出身地と部屋が一致しない時があるのです。

それはまるで高校時代、単語カードの表の綴りを見ながら発音、日本語の意味、派生語を言っているような感覚でした。流石に5年以上相撲を見ていたら幕内はわかります。しかし、十両は結構取りこぼしがあるのです。

私は千枚以上は単語カードを作りました。力士の総数は600名前後です。そう考えたら、その気さえあればどんな力士が土俵入りをしようと答えられるようになれそうな気がします。まあ、確実に暗記する能力は落ちていますが。

ゾッとする

幕内上位から注目していた力士が現在十両で二子山部屋の生田目関です。なぜそうしたのかというと、ただ単純に四股名が変わっていたからです。名鑑を見てみるとそれは本名でした。私の人生の中で初めて見る苗字でした。

そのような理由で気になっていた生田目関ですが七月場所で十両に昇進し、九月は幕下に落ちましたが今場所再び帰ってきました。十両の取り組みはほぼ休日しか見られなかったのですが、見てて面白い勝負をする力士だなあと思いました。

今場所で印象的だったのは中日の阿武咲との一番でした。立ち合い当たった後、生田目の強烈な左の喉輪が阿武咲に入りそのまま後ろへズルズルと押されていったのです。

私はかねがね目や金的などへの反則技を除くと、喉輪が一番エグい技だと思っていました。鍛え抜かれたあの巨体から繰り出される首への攻撃はどれほどの衝撃なのでしょう。考えたくありません。

そんな生田目ですが、千秋楽には逆に玉正鳳に喉輪をくらいます。立ち会いののち両者張り合う展開だったのですが、玉正鳳の右の喉輪が入り生田目は文字通り吹っ飛ばされてしまいました。首を支点と力点にして力がかかり体があれだけ飛ぶのです。見ていて私はゾッと鳥肌が立ちました。

千秋楽の一番で生田目は八敗目を記してしまいました。番付は十両東十四枚目と来場所どうなるか微妙なところです。

自信を無くします

入門した時から注目していた力士があれよあれよという間に番付を駆け上がり、わずか八場所目に関取になりました。ウクライナ出身の安青錦関です。日本に来たのはロシアのウクライナ侵攻が始まったのちというのですから来日2年半に過ぎません。

その安青錦の十両昇進のインタビューが放送されました。彼が流暢に日本語を話す様子を見て、私は驚くと同時に自分に対する情けなさを感じました。

すべての外国人力士に言えることですが、どうしてこんなにも短期間のうちにあれほど流暢に日本語を話せるようになるのでしょうか。インタビューアーに「どうやって日本語を覚えた」と聞かれ、安青錦は「部屋でみんなと生活しながら何となく覚えました」と答えていました。

日本語の家庭教師がついたり語学学校に通うわけでもなく、力士はその土俵人生のDay1から日本語で説明され指導され命令されます。番付がすべての階級社会で這いあがるというハングリーさが、彼らの目の色を変えさせるのだと思います。

語学を続けながらなかなか上手くならない自分の姿が浮かび上がります。自分がやりたくてやっていることですが、そこまで必死ではなく努力の余地がまだまだあると思います。

確かに私が語学を行おうがやめようが私は暮らしていくことができます。彼らは日本語が理解できないと相撲が上達しません。すなわち暮らしていけないということです。

追い詰められた人間の力はすごいんだなと感じます。

その他諸々・・・

・琴手計改め琴栄峰の四股を踏む姿が美しいと思いました。絶対にありえない話ですが、フィギアスケートや体操のように相撲の所作の美しさを競う競技の開催を想像してしまいました。

・平戸海の成績、星の数だけ見ると四勝十一敗と負けが込んでいるのですが、勝負の内容はよく惜しい黒星が多かったです。相撲を見るのがとても楽しみな力士です。

・来年こそは新たな横綱が出る年になると思います。一番近いのは琴桜と豊昇龍ですが、大の里と尊富士がなれば「大尊時代」と呼ばれそうです。「柏鵬・北玉・輪湖・大尊?」と記したTシャツのアイデアが浮かんできました。

・2年前のこの場所で十両から幕下に落ちた私の好きな栃丸。途中ケガもあり序二段まで落ちましたが、じわじわ上がり今場所幕下二十枚目で六勝一敗です。来場所の成績次第で再び十両が見えてきました。

・貴景勝と妙義龍の引退で兵庫県出身の関取がいなくなりました。高砂出身の朝興貴が幕下二十五枚目で四勝三敗でした。順調にいってもあと二場所はかかりますね。

・花道奥に見えた相撲協会のブルゾンを着た貴景勝。どんな気持ちで力士たちを見ていたのでしょうか。大相撲にはさまざまな人生模様があります。

・強い若隆景が帰ってきて嬉しいです。やはり私のなかで一番カッコイイ力士です。

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投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。