夏場所

いろいろありました

先月、大相撲が好きな人は5月病にならないという記事を書いた。夏場所が始まるのを楽しみにしてゴールデンウィークを過ごすことができるからである。実際に私も、ゴールデンウィークが早く終わってほしいと思いながら場所を迎えた。

私の家の居間には、買ったばかりの50型テレビとレコーダーがある。普段テレビを見ない私はレコーダーの操作方法がよくわからないので、妻に頼んで大相撲を録画してもらう。今場所はいつもの幕内全取り組みダイジェストに加え、2時半ごろ行われる十両の取り組みも時間設定してもらった。

録画の量が膨大になるため、適当に早送りしながら見ていく。夜お酒を飲みながら、朝出勤前に早起きして、とにかく相撲だらけの2週間であった。今場所もいろいろな気付きがあったので箇条書きにしてみる。

勝っても土が付く…正代

この1年ほどカド番大関で迎えることが多い。先場所も前半戦の調子が悪く、私は「しょんぼり正代」と呼んでいた。負けた時の表情が何ともしょんぼりであるからだ。

そんな正代も中日以降立ち直り、大阪場所は9勝6敗で勝ち越した。私はその理由は中日にファンが見せた応援幕にあると思った。そこには「正代直也の『直』は立ち直るの直」と書かれていた。名言だと思った。心が暖かくなった。

しかしながら、今場所の正代は本当にしょんぼりだった。いつもに増して解説の北の富士さんのコメントも辛らつであったと思う。馴染みの立ち飲みで正代の取り組みを見ているとき、常連さんの1人が言った。

「正代、オセロが好きやなー」

その心は「カドをやたらと取りたがる」である。その常連さんはかなり面白い方で、4日目の正代ー高安戦でも名言が飛び出した。

初日から3連敗で迎えた高安戦、立ち合いでは高安に押されたが、形勢逆転し正代が倒れ込みながら高安を押し出したのだ。高安は立ったまま土俵を割り、正代はその前にドテッと腹から倒れ込んだ。

正代は勝ちはしたものの、快心の相撲ではなく、お腹の周りも土だらけである。そんな一番を見て常連さんの放った一言。

「正代、勝っても土が付く」

今の正代の状態を表した秀逸な一言である。

私も正代の状態は気になってしょうがない。あの白鵬をも恐がらせた強烈なあたりを来場所では見たい。

石の上にも…栃丸

基本的に幕内しか見てこなかったが、最近では十両が面白くて、ちょくちょく取り組みを見るようになった。その理由の一つは、大好きな炎鵬がいるからである。一時期は前頭上位までいった炎鵬であるが、ここ1年少しは十両にとどまったままだ。小柄な力士が技を用いて大柄な力士を倒す、これこそが相撲の醍醐味であり、彼はそれを存分に見せてくれる。

そのようなわけで十両を見始めたのだが、最近では王鵬や熱海富士といった、これからの角界を背負っていきそうな力士が現れて目が離せない。

今場所で注目したのは春日野部屋の新十両「栃丸」である。相撲の世界では十両に上がることは特別な意味がある。十両昇進は力士として一人前になることを意味し、関取と呼ばれ、大銀杏も十両以上で許される。

引退した力士が、一番うれしかったことを聞かれたとき、ほとんどの力士は「十両昇進の時」と答えるそうである。そんな十両に栃丸は入門から11年かけてなった。

この間、何場所も幕下上位でむかえ、幕下優勝も経験した。しかし、いつもあと一歩のところで十両昇進まで届かなかった。やっとの思いでむかえたこの場所、栃丸の心中を想像するとこちらも嬉しくなる。

私は、場所中ずっと栃丸が勝ち越せるように応援した。勝ち越したらある言葉を使おうと考えていたからだ。栃丸のように、何度も悔しい思いをしながらも努力を続け、いつかその成果をかみしめることができる、そんな状況でこの言葉を使いたい。

「石の上にも3年 栃丸11年」

何とか栃丸は8勝7敗で勝ち越した。私はこの言葉を職場で使ってみた。相撲が分かる同僚の前でではあるが。

その他は…

正代と栃丸で思ったより長くなったので、以下簡単に今場所で感じたことを書く。また機会があれば詳しく述べてみたい。

隆の勝と遠藤

この二人の力士、特に隆の勝を見ると、やたらとお餅を食べたくなる。テレビの画面に映る隆の勝の肌のきれいさは角界一であり、私は「隆の勝ホワイト」と呼んでいる。

二人とも肌にはムダ毛もなく、張りもよく、つるつる感が伝わってくる。正反対の肌、つまりまばらにムダ毛があり、かぶれ気味で、カサカサの乾燥肌を持つ私は、この二人の肌が羨ましい。

遠藤はお茶漬けのコマーシャルに出ているが、隆の勝と二人でお餅のCMにも出られると思った。

若隆景 若元春 高安

この3人の所作が気になる。

若隆景は立ち合いの時、蹲踞(そんきょ)の前に両腕をキュッと内側にひねる。角界一の男前のそんな動作がたまらなくカッコイイ。今から力を出すぞ、というスイッチになっているような動きである。

若元春は、立ち合いの時の左足がいつも右足より少し前に出ている。どうしてなんだろう。左は差しにいきやすそうだが、逆に右が弱くなりそうな気がする。相手からしても、的を絞りやすくなるのではと思う。もう少し相撲が分かるようななったら、その意味を考えてみたい。

高安は制限時間いっぱいになると、土俵の脇で塩を掴み、グッと腕と胸に力を入れながらどこかを見ている。その視線の先が謎である。斜め上の方を見ているように見えるのだが、いったいその先に何があるのか気になってしょうがない。

以上のような所作を、私は私生活でも無意識のうちに行うようになった。特に若隆景の腕ひねりは、本当にクセになってしまった。職場で出ないように気をつけないといけない。

土俵脇のジャニーズ

相撲を見続けていると、力士以外にも目が行くようになった。「なとり」や「永谷園」の羽織を着て、土俵の脇で世話をする人たちがいる。呼び出しと呼ぶのであろうか。今場所ではその中に一人、とても男前の若者がいることに気づいた。

まだ年は二十歳前後だと思える彼は、活動休止したジャニーズの「嵐」の大野君によく似ている。私の妻は大野君のファンなので、早速妻に伝えた。

最初は「えー似てるかなあ」と言っていた妻は、場所の後半では「今日、大野君出ている?」と私に聞くようになった。

2週間はあっという間に終わり、私は数日間の相撲ロスを感じたものの、名古屋場所の番付が発表された今は、7月がくることが楽しみでしょうがない。次の場所からは元大関「朝乃山」が幕下で復帰する。

今は十両以上の取り組みを見ているが、こうなると妻に幕下まで録画をお願いしなければならなくなる。とてもじゃないが、見る時間を作れない。嬉しいような悲しいような、そんな私と相撲との関係が続いていく。

投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。