雨を眺めながら考えたこと

台風接近中

 6月にしては晴れの多い日が続いていましたが、大和イタチの心はモヤモヤが続いております。昨日からようやく梅雨に入ったようで、今朝は朝からしとしとと雨が降っています。天気予報によると、台風が明日にかけて接近中とのことです。

 そういえば去年の今頃、西日本は大雨に見舞われ、岡山や広島や愛媛では大きな災害に見舞われました。「瀬戸内気候は少雨乾燥で、そのためこの地域にはため池が発達した」学校でこういう風に教わった記憶がありますが、そんな話が嘘のような大雨に見舞われました。

 川が氾濫して水につかった平地や、裏山が崩れて土砂に埋まった集落の画像を見てあることが頭に浮かびました。

 それは、大学で受講した地学の授業でした。専門科目ではありませんが、当時の大学は教養として幅広いジャンルの科目を受講する必要があったのです。授業では2万5千分の1の地図を使い、等高線から尾根と谷を探し出して、そこに線を引いていきます。そうすることで、2次元の地図が立体的に見えてきます。山岳地帯などは等高線の密度が高く、容易に線を引くことができますが、平地になると等高線を探すのも一苦労です。しかしながら、地図上のどのような場所にも高低差は存在し、規模は異なるにしろ陸地はすべて尾根と谷の集合体から成り立っているということが理解できる、そんな授業でした。

何が形を作った?

 さて、この地図上にまんべんなく広がる形は何によって作られたのでしょうか。言うまでもなく、そのほとんどは自然の力によってです。団地の造成や人工島など、近代以降、人によって作られた地形もありますが、大まかな地形はほとんど自然の力によって形作られ、いまこの瞬間も作られ続けています。

 地殻変動や火山活動で地面が隆起し、雨風や地震によってそれらが削られていきます。谷は降雨によって地面が削られた跡で、平地はそれら削られた土が堆積した場所です。地球上の水が、海⇒雲⇒雨⇒川⇒海という順番で循環しているように、水と比較するとスピードはかなり遅くなりますが、土や岩も少しずつそのあり場所や形を変化させていきます。川の両側の段々状になった平地は、かつてそこを水の流れが削った跡ですし、平野の土はかつて山にあった岩が流されながら削られて小さくなったものです。火山のある国は、その土の上に地中深くあった火山灰が堆積しています。鹿児島の錦江湾はかつての火山の噴火口で、飛ばされた灰は西日本各地に堆積しているそうです。

 このように、一見無機質に見える地表は、長い時間をかけて自然が編み込んでいった壮大な模様ということができるかもしれません。そして、その模様に最終形はなく日々新しい形に更新され続けています。私たち人間は、その模様の1点に、ある時期、たまたま乗っかているだけの存在です。例えが適当かどうかわかりませんが、スクープで掬い取られ、皿の上に置かれたアイスクリームが陸地で、その上に刺さったスプーンが建物などの人工物です。アイスクリームが溶けて形を変えるように、長いスパンで見れば陸地も変化し、建物もその影響を受けます。

土地の所有って…

 こう考えると、土地を所有することが不安定なものに思われてきます。

 そもそも形を変え続けるものの表面を区切り、そこに価値を見出し、都心部の住宅の場合30年以上の労働の対価を投入し続ける存在になります。土石流に飲み込まれた住宅を見て、「このあと登録された土地の面積や形はそうなっていくのだろう」そんなことを考えました。人は変わりゆくものにも不変という擬制を当てはめることで生活を保っています。人の日々の生活リズムを考える時、それは成り立ちますが、自然が地形を侵食する時間的スパンが人間の生活リズムと重なる時、人は自然に脅威を感じるのだと思います。

 よく考えると、地面に立ち周りを見渡してみると、山も丘も川も平地も斜面も、人工的に作られたもの以外はすべて自然が作り出したものなのです。速さと効率が求められる社会の中で、私もこの自然の持つ時の間隔(感覚)を忘れがちになってしまいます。普段は人の時間の中でモヤモヤに包まれている私ですが、こういった台風の接近を機会に自然のリズムを想像してみると、少し心が軽くなり、たいていのことなら受け入れられそうな気がしてきます。

 そんなことを言っても、すぐに、人間の時間のあわただしさがモヤモヤを復活させるのですが。

 雨はだんだんと勢いを増しています。今年は去年のような災害が起きない程度に振ってほしい、そう願っています。

モヤモヤ ⇒ 幸せ?

”時間のスケールを変えてみると少し心が軽くなる”

投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。