モヤモヤの元を1つ取り去る

県境を超えざるを得ない

コロナが流行りだしてから県外に出ることは極力避けてきたが、今日は仕方なしに梅田まで行き、今帰宅した。

生まれて初めての実用英語検定の受験、1次試験は地元で受験したが、その際配布された解答用紙に2次試験希望場所を記入する欄があった。兵庫県に住む私は当然神戸か姫路で受験できると思っていたが、いくら探してもそれらの街の名前が無い。

仕方なく一番近い大阪の欄をマークして今日を迎えたわけであるが、心の中は「英検を受けるためにわざわざ大阪まで行かなアカンの」と少し面倒くさい。

何度か受けたイタリア語検定は大阪で受験した。これは理解できる。受験者の絶対的な数が少ないのだ。

しかし、検定好き、英語学習好きの日本で一番メジャーな英語検定の2次試験を兵庫県で受けることができないとは思ってもみなかった。人口も500万人を超えているのに。もしかすると1級を受験する人はそれぐらい少なのかもしれない。いや、1次試験の受験会場にはかなりの人数がいたはずだ。ということは、2次試験までの関門はそれだけ高いということか。

いろいろと考えながら電車に乗って昼過ぎに梅田に到着。受験会場の場所はだいたい見当がつくので、それまで茶屋町の丸善で時間をつぶす。ここは日本でも有数の洋書が揃っている書店である。どの本を買おうかと目移りしているうちに集合時間30分前になってしまった。

「ヤバい、ゆっくり昼飯を食べてから行く予定だったのに!」慌てて近くの立ち食いうどんをかき込み、ボートピア梅田の交差点から会場方面へ歩くがそれらしいビルが見当たらない。

時計を見ると集合時間まであと10分、慌ててもう一度地図を確認しながら来た道を引き返していると、拍子抜けするぐらい小さなビルの玄関に「英検会場」の張り紙が見えた。

コロナの影響で受験者が少ないためなのだろうか、「こんな大都市なのに…」と思う外観のビルの狭いエレベーターに乗り、何とか時間前に受付を済ますことができた。

これが面接試験か…

待機する部屋は2つあり、私の部屋には20名ほどがいる。30分待っても一向に人の数が減らない。どうやら別の部屋に待つ人から順番に面接会場に案内されているようだ。その想定の下で私の順番を推測すると、終わりから5~6番目になりそうだ。

今日の面接は午前の部もあったはずだ。ということは面接官もかなり疲れているはずだから「はっきりした滑舌で印象に残る英語を話そう」そう考えた。結局1時間半ほど待って面接室に通される。私の前の人は明らかに緊張していた。私は、不思議と何も感じなかった。人生で初めての英検なのに。

そうだ、私は英語を勉強し続けてきたのに今まで英検を受けたことがなかったのだ。そして、「これからも受けることはないであろう」1年前はそう思っていた。

心のモヤモヤを取り除きたくてブログを書き始め、そして見えてきた原因の一つ。語学学習への負い目というか義務感、これと決別するために去年の10月、英検受験を思い立った。そして私は、その目標の達成、すなわちモヤモヤの1つを消滅させる瞬間に立ち会っている。

「普通に会話を楽しもう」そう思いながら面接室に入る。前方かなり離れたテーブルにマスク+フェイスシールドといういで立ちの面接官が2名いて思わず笑いそうになってしまう。

私の人生で見たことのない、シュールなしかし、ある意味慣れてしまった光景。このコロナ禍が思い出話になるころには、私の目の前にいる重装備の面接官のことも懐かしく思い出すのであろうか。

「スピーチの間だけでも自分のマスクをとっていいか」と聞いてみたがフェイスシールドの向こうから聞こえてきたのは無機質な「No」だった。

お互いの表情があまり見られない中での面接。男性の低い声がフェイスシールドに反響してよく聞き取れない部分があったが、それなりにスピーチも質疑応答もできた。あっという間の10分間が過ぎた。

部屋を出て駅へ向かう道で、私は体にのっかってているものが一つ落ちて、肩のあたりが少し軽くなるのを感じた。「このまま立ち飲みにでも入りビールでも飲んで帰ろうか」と思ったが、そういえば夕食は私が作ることを思い出し、まっすぐ電車に乗って帰った。

モヤモヤはましになる?

英語・イタリア語・台湾語、特に目的もなく3つの言語を学習してきた。英語は仕事で使うが、他の2つに”実用”という側面はない。ただ趣味で楽しめばよいのであるが、語学の場合一定のレベルまでもっていこうとすれば時間と労力がかかる。気軽に気晴らしの運動をするのとは異なる。

忘れてもいいから軽い気持ちで語学もできるのならよいが、私の場合、力が向上しないと、そういった自分が歯がゆくてたまらない。趣味のつもりが、ストレスのもと、モヤモヤの元になってしまう。

ブログを書き始めて改めてそのことに気が付き、去年の10月に英検1級とイタリア語検定2級の今年中の取得を目指すことにした。「それができたら語学と少し距離をとろう。語学力は検定である程度の目安がわかるのだから、後は純粋にそして適当に言葉そのものを楽しもう」

私はその日が来ることを思い描きながら、この10か月間を過ごしてきた。

英検1級の問題集と単語帳を買い、時間を見つけては勉強をした。普段から時折英字新聞を読んでいたが、1級の単語帳を勉強し始めてからはグッと読むのが楽になった。

リスニングはポッドキャストでBBCとNHKニュースを聞きまくった。ライティングは、職場の同僚のオーストラリア人の童君に2度添削をしてもらった。

1次試験合格の知らせがあったので、面接の話題について行けるように、特に英字新聞のオピニオン欄を読む時間を増やした。童君と居酒屋に行き、酒を飲みながら模擬面接の練習をしてもらった。

2次試験が終わった今、去年の10月からのことが取り留めもなく頭に浮かんでは消えていく。まだ、合格だと決まったわけではない。しかし、「ダメでもまた次を受ければいい」、そう思えるぐらい心は軽い。

漠然とした不安を抱えながら適当にやってきた語学学習に、この10か月間は変化が生まれた。検定という目標ができたことも1つであるが、「漠然とした不安の正体」が少しづつ明らかになりつつあることが、私が語学を行う時のマインドに良い効果を与えているような気がする。

とりあえず、今日で英語に対する「~しなければ」という心の縛りは卒業する。良い結果を待ちながら、次の心の束縛を外す方法を考えていきたい。

投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。