30年前の本
リビングのテーブルの上に一冊の本が置いてあった。「若きウェルテルの悩み」、私が大学生の頃に買ったものだ。
子どもが生まれるまでは本を捨てたり売ったりすることがなかった私であるが、今では定期的に本を処分する。ネットの出現で知の在り方が変わってきたのが大きな理由の一つであるが、子供たちが成長すれば物理的にも私のためのスペースは少なくなる。
私のなかではゲーテのこの著作は処分してしまったと思っていた。しかし、こうして私の目の前に現れてきた。読んでいるのは高校生の次男であった。彼の部屋の壁の一面には備え付けの本棚がある。かつては私の部屋だった。だからその本棚には私の本もまだ混ざっている。彼はそこからこの本にたどり着いて読んでいるようだ。
次男も高校生に入りぐっと大人になってきた。いろいろなことを考えて、時にはもの思いにふける姿を見せるようになった。そんな彼を、この本のタイトルが惹きつけたのであろう。
さて、私はというとこの名作を読み通していない。学生時代のある日、私は書店でこの本を手に取り購入した。おそらく明るい気分でそうしたのではなかったであろう。次男と同様に、私も煮え切らない何かを心に抱え、この本のタイトルに引き付けられた。
“「いつか」はいつ?” の続きを読む