心配り
仕事のスケジュールを調整中、今週末を最後に向こう3週間1日も休日がないということに気づき、衝動的に兵庫から名古屋へサ活に来ました。
ウェルビー栄店へ入館して30分、最初のローリュを体験し、そのレベルの高さを認識しました。
なんというか、熱波師の気持ちが伝わってくるんです。
熱波師だけではありません。この施設全体を通じて、利用者に快適に過ごしてほしい、そんな気持ちが伝わってくるのです。
他とどう違うんだ、と言われたら、なかなか説明しづらいのですが、例えば、それは更衣室のタンクに入り麦茶や冷やしタオルであったり、浴室の洗い場に置かれた歯磨き粉であったり、半分以上無くなる前に補充される各種タオルであったり、特に意識はしないんですが、気遣ってもらえば嬉しい部分がストライクで満たされる、そんなサウナであると思います。
熱波師の心配りに感動し、かかり湯の後に水風呂へと進みます。
メインのサウナと浴槽の間、かかり湯のすぐ隣に水深1メートルほどある水風呂があります。
サ室で芯まで温まった体を、少しぬるめのかかり湯で沈め、階段を登り水風呂へザッブーン。
私が今まで(期間が短いですが)経験したサウナで最も深くて最も冷たい水風呂。体全体に冷たさが行き渡ります。
私は、できるだけ動きを止めて、熱の羽衣を意識します。
冷たいけど温かい、そういった感覚が体全体を包み込んでいきます。
あーあ、なんて冷たくて気持ちいい水風呂なんだ、としばらく深い水風呂に身をゆだねるのですが、水温のせいか手足の先が徐々に痛くなってきます。
いつもなら2分から3分間は水風呂を楽しむ私ですが、この日は1分半ほどで外に出ます。
深い水深に圧迫されていた血管が一気に解放されます。血の巡りがよくなり、全身に酸素が行き渡ります。
後頭部から首筋にかけて、サワサワという例の感じがしてきます。
ここからこの感覚が全身に広がっていけば、”ととのう”ことになるにかな、そんなことを思っています。
ウェルビー栄には露天スペースがないため、一番奥まった部分、森のサウナ奥、アカスリ処横のととのいスペースで横になります。
そこには、ゆっくり横になることができる木製の椅子が4脚あります。
この日は幸運なことに、私が水風呂に入り、小休憩を行おうと思った時はいつも空いていました。
極上の4脚です。
眠りに落ちる心地よさ
サウナ+水風呂+小休憩の組み合わせを3回終わらせた後、私は大休憩に入ることにしました。
1時に最初のローリュを受けて約1時間、5時まで時間はまだたっぷりあります。
2回の浴室から階段で3回の休憩スペースへ上がります。
麻雀、マンガ、ネット、目的に応じた部屋割りの中、最大面積を誇るテレビ付きリクライニングシートゾーンへ向かいます。
浴槽の様子からは想像できないくらいの混雑で、約30席のシートの内、空いているのは3席ほどでした。
早速、マンガを手に椅子を確保します。
手元の漫画は「グラゼニ パリーグ編」。
明石市の龍の湯に行き始めてハマったグラゼニシリーズの最新版です。
2時半ごろに読み始め、気がついたら4時前でした。
グラゼニのページを胸の上に開いたまま、知らないうちに1時間半の時間が流れていました。
「マンガを読まないと時間がもったいない。寝てはもったいない、何か有意義なことをしないと…」
これが私の思考回路なんです。そしてこの考え方がモヤモヤの原因になり、時々私を苦しめていることもわかっています。
”何もしない時間は悪いこと”、”何かしなければならない”、その焦りから中途半端なまま何かを行い、その不完全さがまた次の焦りを生み出す。
そもそも、今日、私はサウナに入るためだけに名古屋に来ているのです。兵庫県内の神戸や姫路でもいいはずです。時間と費用を考えれば、もっと有意義なことができたはずです。
でも、名古屋までサウナに入りに来て、休憩室で眠ってしまうこと=もったいないこと、そう考えることが私の心の余裕のない部分だと思います。
結局グラゼニを読みながら、大変心地よい1時間半の昼寝を行いました。
後から考えれば、これこそ有意義なことなのですが、眠る前にそのような心持になれない自分が少し恨めしいです。
5時のリミットまであと1時間半。
一瞬グラゼニの続きが頭の中によぎりましたが、今日の目的であるサウナをもう一度堪能することにしました。
思わぬプレゼント
浴室へ再び向かい、森のサウナを体験します。
入り口にはサウナハットや専用のバスタオルが用意されています。
薄暗く落ち着いた雰囲気のサ室に入ると、小さな窓がいくつかあり、そしてその窓の位置が森の中を体感できるように計算されていることがわかります。
階段状の椅子、その反対側には横になるスペース、そしてその間にはセルフロウリュのできるサウナストーブが。
誰もいなかったので、枕に頭をのせて横になってみました。
全国に名の知れたこのサウナで、たった一人しか味わうことのできない贅沢です。テレビもなく、薄暗い空間に身を横たえていると様々なことが頭の中に浮かんでは消えていきます。
「今まで、平凡だけどいろいろなことがあったなあ、俺の人生」「これまでと同じように平凡で、モヤモヤする気分も続くかもしれないけど、それもまた受け入れて生きていこうか」
心地よい空間に身をゆだねると、考え方も少し前向きになり、自分のことをそのまま受け入れたい気持になります。
水風呂の後、最後に高温サウナに入ってしめようかとサ室へ向かうと入り口のドアが解放されています。
時計を見ると4時前、そうだロウリュの時間だ。
本日2度目のローリュ。期待に胸膨らませて熱波師を待ちました。
4時になり入場してきた熱波師二人の手にはヴィヒタの入った桶が。
今回のロウリュは偶然にもヴィヒタサービス付きでした。
後にフロントのポスターで知りましたが、このサービスは木曜と第4土曜、それぞれ2回づつしか行われないレアな企画でした。
サ道を始めてわずか2か月弱でヴィヒタを体験できる。
私は自分の運の良さを祝福したい気分でした。
トントゥ(サウナの守り神)からの思わぬプレゼントに感謝。
熱波師たちがアロマ水につけた白樺の枝をストーブの上でふるいます。
先ほどのストレッチロウリュで味わった、心地よい熱波を手首を効かせたバスタオル捌きで個々に送ってくれます。
そして、その時はやってきました。全員熱波師に背中を向けます。
熱波師たちは一人ずつ丁寧に白樺の束をアロマ水に浸し、最初はサラサラと撫でるように、そして背中の左右をピタッ、ピタッと優しく打ち付けます。
白樺の香りと、打ち付けられる刺激で、良い汗が出ていくのがわかります。
ほぼ全員おかわりをした後、後ろを振り返ると、床には一面飛び散ったヴィヒタの葉が。
「これは大変なサービスだ」正直そう思いました。
ロウリュ終了後は、サ室清掃とマット交換です。
しかし、熱波師の一人は出口横のかかり湯コーナーで手桶を持ち、サ室を出て葉っぱまみれになったサウナーの一人一人にお湯をかけて洗い流してくれます。
葉っぱを水風呂に入れないためのものでしょうが、その所作はとても自然で思いやりに溢れているものでした。
このサウナで働いている人は,誰もがサウナ好きであるような表情と動きを見せてくれます。
後で知ったのですが、ここの経営者はサウナ界のゴッドファーザーと呼ばれる方で、全国のサウナーたちの間にその高名と妥協しないサウナ作りが知れ渡っているそうです。
サウナに対する熱い思い、利用する人、働く人、どちらからも強く感じられら今回のサ活でした。
名古屋まで、少々時間はかかりますが、定期的にここへサウナ愛に触れに来よう、そう思いながらウェルビーを後にしました。
モヤモヤ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ 幸せ?
”モヤモヤしてもいい。それを癒してくれる場所を見つけた。”