バイトに向かいながら
私は車を運転する時ラジオを聴いていることが多い。私の中でラジオを聴くということはNHKのAM放送を聞くこと。それも第2放送の方が圧倒的に多い。この日も自宅前に止めた車の中で朝の語学放送を流していた。
「歌聴かせて!」長男は車に乗り込むなり私に言い、スマホからQUEENを流し始めた。私はラジオを止めた。長男は喉の調子を気にしながらキーを合わせようとしている。
彼は県外の大学へ通っているが、この時は春休みで帰省中、地元のバイト先へ私が送っている途中だった。バイトが終わるとライブハウスで高校時代の仲間とイベント、そこで何曲か歌うというのだ。片道15分の道中、彼は歌の練習を続けた。大学生活について話をしようと思っていた私は少し拍子抜けした。
曲が「ボヘミアンラプソディ」になった。これなら私も前半部分の歌詞を覚えている。何度聞いても心に染みる、何かを考えずにはいられない歌詞である。彼に合わせて私も下手くそな歌を歌う。バイト先で彼を下ろして思った。
「こんな日が来るんだ」
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