直接関係ないけど

NHK教育

独身の頃、自分がこのような番組を真剣になって見るとは想像すらできなかった。人生は予想しなかったことにはまり込むから面白い。

結婚して長男が生まれ彼が言葉を話し始める頃、私はNHK教育テレビの「お母さんといっしょ」を一緒に見始めた。その頃は妻が7時前に出勤し、定時制高校に勤務していた私が長男に朝食を食べさせて保育園に連れて行った。その間、一緒にこの番組を見るのだ。

幼児向けの番組だけあって、気持ちがマイナスになることがない。私は一緒に歌を口ずさんで、体を動かして楽しんだ。普段はハードロック・ヘヴィーメタルばかり聴いていた私であるが、息子たちが小さな間はこの番組の選曲集を一番聴いた。

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豆と芋

秋のツーリング

年を重ねるにつれて1年が早く感じられるというのは本当で、それは感心するというより時に恐怖となって私の前に現れる。特に決まった時期に同じことを行う時、その思いは際立ってくる。

「あれから1年も経ったのか。嘘だろう。私は後何回これを繰り返すことができるのだ」

馴染みの立ち飲みでバイク好きが集まってツーリングを始めて以来、私たちは頻繁に丹波の地を訪れる。神戸から気軽に来られることもあるが、ここは美味しい食材と地酒に恵まれているからだ。

3年前の秋、私たちは丹波篠山ので温泉と猪肉を味わった。一日二組限定の小さな宿。お酒の持ち込みもできるので、私たちは酒蔵をバイクで周り、新酒の飲み比べをしながら鍋をつまんだ。

男四人が一緒に風呂に入りながら、私ははるか昔の修学旅行を思い出した。大人になってこんなことができるとはなんて幸せなことだろうと思った。それに加えて、宿のご主人とおばちゃんが魅力的な人であった。

だから私たちは翌朝宿を去るときに翌年の猪鍋も予約した。

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エネルギー低下

目覚め

目を覚まして寝室からリビングへと移動し遮光カーテンを開ける。朝の光が部屋の中に降り注ぎ、清々しい朝を感じられる瞬間である。

「今日もいい天気、一日頑張ろう!」と声に出すと体に力がみなぎり前向きな気持ちになる。

しかしながら、最近は目をさます直前まで悪い夢を見ていることが多い。目を覚ましてしばらくすれば夢の内容は忘れてしまうが、何かに追われたり困った状況に陥ったりというような夢であることは確かである。

どっと疲れた気持ちのままリビングに移動してカーテンを開ける。空は晴れてるのに私の気持ちはどんよりとしたままである。時には以前のようにやる気のある朝を迎えることもあるが、その割合は減っている。

明らかに今年度に入って心のエネルギーが低下している。ブログを書き始める前のように、急に泣きたくなったり絶望感に襲われるほどではないが、私が出勤する足取りは重い。

心のエネルギーが低下しているのなら、それを補充しなければならないが、その前に原因を考えてみたい。

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10月第一日曜

私の一日

10月5日日曜日、私の1日を箇条書きにしてみます。

朝5:30起床。目覚ましは6時に設定していたが、休みの日は必ずといっていいほど設定時刻より前に目が覚める。前日酒を飲んでいても目覚めがすこぶるよい。平日の私とは体と心の構造が異なるように感じる。

顔を洗い、お湯を沸かしてほうじ茶をいれ、それをすすりながら6時前には勉強開始。この日は英語から。「杉田敏の現代ビジネス英語」を一冊、4レッスン分音読する。

2021年3月に長年お世話になった「実践ビジネス英語」のラジオ放送が終了したときには、「これからどうしよう」と喪失感に襲われたが、すぐにこちらのムック本シリーズが出版されたので救われた。

音読が終わればTOEIC対策本「990点攻略 文法・語彙問題1000」に取り掛かる。これまでTOEIC L&Rで何十回も満点を取った濱崎潤之輔先生のノックを受ける。5〜60問解いたところで妻が起きてきたので、パンとコーヒーの朝食をとる。

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令和七年九月場所

教師も生徒も夏休みの終わりは同じ気分になるようで、8月末の職員室は「ああもう授業が始まるのか」と少し重い雰囲気になります。私はというと、相撲が好きになって以来休みが終わることよりも「早く九月場所が見たい」という思いの方が強く精神的に助かっています。

しかし、その分九月場所が過ぎ去った今、一般の人々にひと月遅れた気分の落ち込みを感じています。簿記の借方と貸方が釣り合うように、人生もトントンなんだと感じる次第であります。

今場所も印象に残ったことを書き綴ります。

若くて強い

幼い頃の実家にはテレビが1台しかありませんでした。そしてそのテレビには、場所開催中はいつも相撲が流れていました。祖父母が揃って相撲好きであったからです。

私は興味もない相撲をダラダラと見ていました。千代の富士という筋肉質な力士がいつも勝つので面白くない、そんなことを思っていました。そのうち祖父母の部屋にもテレビが付き、私が相撲を見せられることもなくなりました。

今子供が相撲を見せられたら、かつての私と同じことを感じるかもしれません。「大の里がいつも勝つので面白くない」と。

今年はこれで三場所優勝を成し遂げました。去年は二回です。千代の富士のように見た目はそれほど筋肉質ではありませんが、若くて強い横綱が誕生したと思います。

豊昇龍の成績が横綱としては安定していなく、琴櫻も大関になてから不安の多い場所が続いています。三役勢の平均年齢も高く、彼を止められそうな若い力士は安青錦ぐらいかと思います。

なかなか大関が生まれない、また生まれても横綱まで昇進しない中、しばらくは大の里が勝ち続けると予想しています。個人的には、柏鵬、北玉、輪湖に続いて尊富士と大尊時代を築いてほしいと思っています。

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諸条件

長月

9月に入ると、私は実家に頻繁に電話するようになります。稲刈りの日程を決めるためです。稲刈りを行うためにはいくつか条件があります。

まず、当然のことですが穂が十分に実っていなくてはなりません。稲穂の中身こそがお米であるからです。そして次に稲刈りの直前、または当日に雨が降ってはいけません。コンバインで刈り取る場合、ぬかるみに機械が足元を取られたり、機械内部が濡れて籾と茎をうまく分離できなかったりするからです。

コンバインとは稲刈り用の機械で、刈り取った稲を籾とそれ以外とに分けて、籾は収穫用の大きな袋に、それ以外は切り刻んで田んぼに撒いてくれる大変便利なものです。

かつて私の実家では、コンバインとは異なる一条ずつ刈り取る機械を使い稲を刈り取っていました。刈られた稲束は自動的に紐で括られて機械の脇に放られます。私たちはその稲束を一輪車を使って集めて稲木のところまで持っていきます。

稲木とは刈り取られた稲束を乾燥させるためにしばらく掛けておくためのもので、物干し竿をひたすら長く太くしたような形をしています。

稲木に掛けられた稲は天日と風によって乾かされ、だいたい2週間後に機械によって脱穀されます。脱穀された籾は袋へ詰められて、その袋を地域の共同作業所にある機械で籾ずりします。こうして玄米が手に入ります。

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ため息

疲労感

2学期が始まって3週間が経過しようとしている。教師、生徒ともに夏休み気分も抜けて、長い2学期の序盤が淡々と進行している。私は10月の中間考査までの日数をカウントして、授業の進め方を調整する。深く教えるところを考えたり、時には英語以外のことの話をしたり。

職員室へ向かって歩きながら、言いようもない虚しさを感じることがある。この時期に限ったことではない。私がこの職業についてから何十回も感じてきたことだが、最近は特に強く感じる。時に一日暗く沈み込んでしまうくらいの気持ちになることもある。

「一体私はここで何を教えているのだろうか」

私はため息をつく。

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継続力

続けること

「自分は果たして継続力のある人間なのだろうか」と自問する。何かを続けるということには大きく分けて三つの側面があると思う。

一つ目は自分のやりたいことを、自ら進んで続けること。

二つ目はできればやりたくないが、仕方なく続けること。

三つ目はするべきではないとわかっているが、続けてしまうこと。

もちろん、物事はそんなに単純に分けられるわけがなく、この三つの間には無数のグラデーションが存在する。さらに、ある一つの物事であっても、時には一つ目の「続ける」になり、またある時には二つ目や三つ目の「続ける」に変化する。

例えば私にとってイタリア語学習はこれに当てはまる。高校で英語を教えている私は、英語がわからない生徒の気持ちを理解しようとイタリア語を独学で始めた。外国語なら何でもよかったのだが、かつてロンドンで知り合ったイタリア人が話すイタリア語のイントネーションが何とも魅力的に感じられた。だから、本当にそれだけの理由でイタリア語を選んだ。

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大人の友達

六甲アイランド午後6時半

8月下旬の週末、厳しい残暑にも負けずに私はバイクにまたがり六甲大橋を超えました。神戸に住み始めてから何十回も渡ったこの橋です。いつもはスロープを降ってそのまままっすぐ進みますが、この時は左折して大きな通りを東へ向かいます。

六甲アイランドは台形のおまんじゅうのような構造をしています。あんこの部分は住宅や商業地域になっていて、それを取り囲む分厚い皮は港湾や流通施設です。私が左折したのは、その二つの地域の境目皮側で、そのまま進みさらに左折するとフェリーターミナルが現れます。

長い間この街に住んでいますがここへ来るのは初めてで、なんだか知らない街にいるような気分になります。係員に誘導されるまま広い駐車場にバイクを停めると、すぐに2台の見慣れたバイクがやって来ました。ツーリングクラブの二人です。

ヘルメットを取って挨拶を交わします。二人とも口元が緩んでいます。自分では見えませんが私もおそらくそうでしょう。楽しみと期待とで自然に笑みが込み上がってきます。ついにこの日がやって来ました。

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元気であってこそ

深夜3時

寝返りを打った瞬間痛みで目を覚ましました。痛みは左の肘からやってきます。恐る恐る右手のひらでそこを触ってみます。腕の外側がポコっとピンポン玉のように腫れ上がっています。熱が手のひらを伝わってきます。かなりの熱さです。

「ついにやってきたか!」

私は心の中で叫びました。同時に六角精児さんのあの歌が頭に流れます。

「若い頃の偏食がたた〜り 尿酸値が異常に高い」

私は30代から尿酸値を下げる薬を飲み続けています。父親からの遺伝もあると思うのですが、主な理由はお酒とプリン体の多い食べ物が好きであるという確信があります。

薬を飲み続け、なんとか尿酸が結晶化する値を下回る数字を維持して来ましたが、今までに三度痛風の発作が出たことがあります。いずれも膝で一番近いもので3年前でした。

今回肘が腫れて痛みが出た時、四度目の痛風発作を覚悟しました。そして軽く絶望感に襲われました。というのは以前の職場で筋金入りの痛風患者を知っていたからでした。

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