風に吹かれながら
サウナ室で10分間体を熱し、もう勘弁してくれというところで部屋を出て水風呂の中で「ううう」とか「ヒューっ」といった声にならない声を上げて露天スペースへ移動する。幸いなことに数少ないリクライニング式のイスが空いている。腰を下ろして体の水分を拭き、ゆっくりとイスを倒して仰向けになる。
ぼーっと空を眺めているとアドレナリンが放出されて視界が揺れる感じがする。今日は風が強い日。灰色の雲が頭上を次から次へと絶え間なく流れていく。手も足も、眼球さえも動かすことなくじっとしたまま一点をぼんやりと眺めていると、動きのある雲が生き物のように見える。心臓が全身に血液を送ろうと鼓動するのが感じられる。
私と雲の間にもう一つ動きが加わった。
どこからともなく一羽の大きな鷹が翼を広げて私の視界の中に入ってきた。翼は広げたままでほとんど動かさない。それでいて海の方からの風にのり、悠々とした大きな動きを見せる。きっとあれだけ見事に風を制御できれば気持ちいいであろう。
空の食物連鎖の頂点に立つ存在。風に乗りながら、その鋭い目で地上をはい回る獲物を探っているのだろう。「かっこいいなあ」ぼんやりとまどろむ私の目を覚まさせたのは、鷹から飛び出したもう一つの動きのある物体であった。
「うぁ、なんか出た!」
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