目を閉じながら
私はお酒が好きな人間なので家で飲み始めると寝る15分ぐらい前まで飲んでしまいます。「酔っ払ってそろそろ眠くなったな歯磨きしようか」と洗面所に向かい、それが終われば水を一杯飲んでから布団に入ってすぐに眠りにつきます。
ですからお酒を飲んだ日、私は寝付けない苦しみを知りません。本来なら毎日でもお酒を飲みたいところですが、健康のため、学習時間を確保するため、自己嫌悪にならないためという理由で週に2〜4日の休肝日をもうけます。
お酒を飲まなかった日は、布団に入って眠りにつくまでに少し時間がかかります。そんな時は頭の中で楽しいことを考えると眠りやすくなります。そして私にとってその「楽しいこと」とは人文地理学的な景色、とりわけ鉄道を中心とした街の姿になります。
モータリゼーションの発達とそれに伴う商業施設の郊外化で、日本の中小都市の駅前はすっかり寂しくなってしまいました。寝る前の私の空想の中では、そのような現実から離れ、各種別の列車が次々と発着し人で賑わう駅や駅前の街の姿らまぶたの内側に現れます。そんな景色を見ているうちに私はシラフでも眠りにつくことができるのです。
これはあまり人には言いたくない私の密かな癖なんですが、その眠る前のまぶたステージにここ2ヶ月間かなりの頻度で現れ続けている街があります。それは現実の街なのですが、実際の景色と時を超えた景色と私の空想の中の景色とが混ざり合って出現します。
街の向こうには海が見えます。海の背景には噴煙を上げる火山が見えます。そして一番手前には街の景色に溶け込んで走る路面電車の姿があります。
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