衝動的に名古屋でサ活 (前編)

夏も終わりかけて…

夏の終わりは何となくさみしいものです。
学生たちは、「夏休みの終わり」と直結しているのでわかりやすいのですが、私たちはどうしてなのでしょう。

私個人でいうと、人生を1年に例えていることから来る寂しさだと思います。一番暑かった季節が終わり、穏やかに、しかし確実にやってくる冬を迎えるための季節に入っている事実が、そんな感情を喚起しているのでしょう。

「夏も終わりだなあ…」と思いながら仕事のスケジュールを調整していて気がつきました。

「この週末を終えると、あと3週間休みがない。」

土日も含めてです。
”月曜から20日間働きづめ!次の休みは秋だ。”

この土日で終わる私の夏。何か好きなことをしたい。
バイク? 語学? 読書? 旅? 立ち飲み? サウナ?

自分の直感を頼り、一瞬で出た答えが「名古屋でサウナ」でした。
これなら、好きなもの内、サウナ+旅(鉄道)は確実に行えますし、その気になれば車内で語学ができるし、現地で立ち飲みだって行けるかもしれません。
名古屋なのは、マンガ「サ道」を読み、気になっていたサウナの中で、日帰りで行けて旅行気分が味わえそうな場所だからです。

私は来週からの仕事はいったん忘れて(ふりをして)この1日に集中することにしました。

目指す場所は、名古屋の中心栄にあるサウナ「ウェルビー」です。Well Be。反対にするとBe Well。「よくあれ」ということでしょうか。とてもととのいそうな名前です。
このサウナ、名古屋市内に名駅・栄・今池と3店舗あります。
サウナサイト「サウナイキタイ」で調べると、愛知県内のサウナの中でダントツの人気を誇る場所です。

いろいろ調べるうちに今池店に気持ちが傾きましたが、ローリュの時間が16時からなので、栄に行くことにしました。

数か月前はサウナーでなかった私が、いきなり日本でも有数のサウナに挑戦です。これだから人生は面白いし、それができるいい時代に生まれたこと、理解のある家族を持ったことに感謝です。

私は朝早く家を出て鶴橋から近鉄電車に乗りました。

名古屋駅前
名古屋駅前

こんな都心に…

11時前に名古屋に到着。早速帰りの特急券を確保しました。
名古屋発18時、移動を考えると正味5時間ほどサウナが堪能できそうです。

場所は地図でだいたいの検討をつけていたので、駅から栄の街を歩きながら探します。
現在では目的地まで音声で案内してくれるアプリもあるようですが、目当ての場所までたどり着くドキドキ感と、五感を使って街を味わいたいので私は利用したことがありません。カーナビも同様です。
しかし、私のそういった世間とズレた感覚がモヤモヤの原因の一つになっているかも、と考えることもあります。


街には大きなビルが立ち並び活気にあふれています。日本で3番目の都市圏のその中心地。名駅にその地位を奪われつつあると聞きますが、それでも景気のいい名古屋の躍動感が伝わってきます。

栄駅から約5分、街のど真ん中にそれはありました。

ウェルビー栄店
ウェルビー栄店

向かって右側の入り口から入ると、従業員のお姉さんから「ご予約のお客様ですか」。どうやら、こちらはカプセルホテル用の入り口です。
サウナーの間で、名古屋出張の際はウェルビーに宿泊というのが常識というのが「本日は満室です」という札からうかがい知れます。

改めて、左側の入り口から入り、階段を登り受付へ。途中には有名人のサインが数多く飾られています。

入浴料を払い、館内着に着替え、昼時だったので食堂へ向かいました。
これから大量の汗と共に塩分も流れ出ることを考え、味噌煮込みうどんを注文します。
名古屋の赤みそで煮込むうどんは、繊細なカツオとコブの出汁に慣れた兵庫県人にとっては少し塩辛く感じますが、これからサ室で大量の汗を出すことを考えるとありがたくて汁まで飲み干しました。

お腹も満たされ、塩分も補給したところで浴槽へ向かいます。

ストレッチロウリュ

このサウナでは1時間ごとにロウリュサービスがあります。
開始5分前になると熱波師がサ室のドアを開け、換気を行います。
それを合図にサウナーたちが集まってきます。

土曜の超有名サウナということで、かなりの混雑を覚悟していましたが、昼間のためか浴槽内は15人前後。
それでも、時間になるとサウナ内はほぼいっぱいになりました。

私にとって本格的なサウナでの初めてのロウリュ、嫌が上でも期待が高まります。
13時の回は「ストレッチロウリュ」と名付けられていました。
二人の熱波師の入場、口上に続き、ストレッチのインストラクションが始まります。

首、肩、腕と座ったまま上半身を中心にストレッチをしていきます。
まだ体が蒸される前、心も体もきついと感じることなく体を動かすことができます。
「換気をして適度にサ室を冷やしておいたのはこのためか!」と、その時思いました。
ロウリュは人数が多いとどうしても時間がかかります。クライマックスであるアウフグースを良いコンディションで受けるためには、蒸され過ぎに注意しなければなりません。
ましてや、今回はストレッチ → ロウリュ → アウフグースという流れです。私の考えすぎかもしれませんが、良い状態で最高の風を受けてほしい、そんな気配りが最初の換気だったのかもしれません。

2分ほどでストレッチが終わり、柄杓で漉くったアロマ水をストーブへ。
動きがとても丁寧です。
集中して、場所と速さを考えながらアロマ水をストーブの淵に落としていきます。その慎重な動作に、これは単に湿度を作るためだけの作業ではないということが伝わってきます。

本場フィンランドでは、サウナは「神と出会う場所」、うる覚えですがそのような呼ばれ方をされていると聞きました。
熱波師の真摯な姿にこちらもない襟を正す気分です。

柄杓で2度、3度、ゆっくりと慎重に、「ジュッ、ジャジューッ、シャーピキピキ」、アロマ水がその芳香と水分を激しく飛ばしながらサウナストーブの熱せられた石の間を流れ落ちていきます。
二人の熱波師はタオルをそれぞれ水平方向と垂直方向に廻し、湿度とアロマを拡散させていきます。

上半身の方から体感温度が一気に上がり、部屋全体がユーカリの香りに包まれていきます。
ストレッチ開始から約4分、お待ちかねのアウフグースが始まりました。
1人4回ずつですが、サ室内の人が多いため、おこぼれの風が頻繁にやってきます。
隣の人がバンザイスタイルで風を受けています。
「これなら上半身にまんべんなく風がいきわたりそう」
人目を気にせず私もバンザイをします。

熱波師は、手首のスナップを巧みに使い、バスタオルで最初は強く、そのあと余韻のある優しい熱風を送ってきてくれます。
両腕を常に上げて風を送り続ける動作は相当体力を消耗すると思います。それでも、熱波師の二人は苦しそうな顔一つせずに、サ室を埋めたサウナー一人一人に風を送り続けます。
「ありがとうございます」。小声ですがアウフグースが終わったサウナー達から次々と聞こえてきます。

入浴を始めてまだ30分も経っていませんでしたが、私は「このサウナを味わうために、私はこれから定期的に名古屋に来るかもしれない」と思い始めていました。

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投稿者: 大和イタチ

兵庫県在住。不惑を過ぎたおやじです。仕事、家庭、その他あらゆることに恵まれていると思いますが、いつも目の前にモヤモヤがかかり、心からの幸せを実感できません。書くことで心を整理し、分相応の幸福感を得るためにブログを始めました。