あれよあれよ
この場所の最大の話題はなんといっても大関大の里の二場所連続優勝でした。場所後すぐに横綱審議委員会が召集され、5月28日には横綱大の里が誕生するに至りました。
私はなんだか夢を見ているような気がします。全てが早すぎるのです。白鵬が引退し、照ノ富士が一人横綱でいた間、私は「いつになったら次の横綱が現れるのだろうか」と思い続けていました。
というのは、幕内力士たちをみると大関で連続優勝するのとても困難なことに思われたからです。私が相撲に興味を持ち始めてからも、高安、栃ノ心、貴景勝、朝乃山、正代、御嶽海と続々と大関が誕生しました。
しかし、この中で二場所連続で成績がよかった力士はいないし、みな大関から陥落していきました。関脇小結や幕内上位にはよい力士がたくさんいて、そう簡単に連続優勝させてくれないのが現在の角界です。
そんな中、大の里は幕下付け出しからわずか二年ほどで横綱昇進を決めました。その間に優勝は4回です。全てが別格な力士だと思います。
二年と少し前に、好角家の同僚から「今度横綱候補が入門してくるから」と聞かされて、私は半信半疑に思っていました。これだけ混沌として場所ごとに上位が変わる相撲界でそう簡単に頂点まで進めるとは思わなかったからです。
それが、あれよあれよという間に今回の昇進です。私の手元にある令和七年度版「大相撲力士名鑑」に掲載されている大の里の写真は大銀杏が結えてません。その状態で照ノ富士らと共に表紙を飾っているのです。
東西の横綱が揃い来場所が楽しみになってきました。私の中では尊富士に頑張ってもらって、柏鵬、北玉、輪湖に続く「大尊時代」の到来を期待しています。
二人のステップ
熱海富士は仕切りの時に独特のステップをすることで有名です。その熱海富士が先場所遠藤との対戦時に、遠藤にステップ返しをされ、その後熱海富士も追加のステップをするという場面に出くわし、私はテレビの前で爆笑しました。
こうなれば今場所もこの二人の対決が楽しみでたまりません。
それは三日目に実現しましたが、前回に比べると面白さは半減しました。熱海富士も遠藤もステップを踏むのですが、お互いに動きが軽く遠慮がちなのです。
それでも前回同様に熱海富士、遠藤、熱海富士の順でステップを踏み立ち合い。遠藤が肩透かしで勝ちました。
今場所の遠藤は足を痛そうにしていました。彼もベテランの力士の一人です。体に気をつけて是非来場所も熱海富士と対戦してほしいと思います。
どちらも頑張れ
テレビで観戦していてどちらを応援したらよいのか困る時があります。そんなことは個人的なことでどうでもよく、別に困る必要はないのですが、自分の中で応援した方が勝つと嬉しいので困ってしまうのです。
六日目の幕内はそのような取り組みが続きました。豪の山ー大の里、琴櫻ー尊富士、翠富士ー獅子などです。特に翠富士と獅子はこの日まで全敗同士の対戦でした。どちらも大好きな力士です。
仕方がないのでテレビの前で「翠富士、獅子!」と両方応援します。どちらが勝っても嬉しい、そういうものを持てることは幸せなことかもしれません。
そうです、私が贔屓にしている力士もそうではない力士もかけがえのない存在で、いろいろな力士がいて私がさまざまな感情を持てるからこそ相撲全体を楽しむことができるのです。
翠富士と獅子、どちらも応援しながら、同時に全ての力士を応援したい気持ちになりました。
満員御礼
今場所も十五日間満員御礼の垂れ幕が掲げられました。大の里や尊富士のように、突然現れて優勝する若くて強い力士の存在、または白鵬が引退し、力士の実力が拮抗する中誰が優勝するのかわからない状況も相撲人気に一役買っていると思います。
大相撲が盛り上がって多くの人に見られるのは良いことなのですが一つ困ったことがあります。それは、いざ自分が見に行くとなった時チケットが取れないことです。
私はここ数年毎年名古屋場所を見に行っています。チケットは今場所中の販売でした。私はいつもチケット大相撲で入手するので、サイトにアクセスして座席を見ます。
名古屋場所は今年から新しい体育館です。そのため私が欲しかった「テーブル付きペアます席」の設定はありませんでした。仕方なく他の種類の席を第4希望まで入力して抽選を待ちます。
「ご希望のお席をご用意することができませんでした」
初めて受け取るメールにしばらく意味が理解できませんでした。
「第1希望がダメだったってこと?」
私のくせに珍しく楽観主義者になっていますが、そのメールは第4希望まで落選したことを示すものでした。
「椅子席Bでも落選するのか!」
焦った私は次に来るチケットピアの先行抽選では、日にちを変えて第8希望まで申し込みました。
結果全て落選。いよいよ焦りました。名古屋のホテルはもう予約済みです。「大相撲ってそんなに人気なのか」と嬉しいような悲しい悲鳴をあげます。
5月17日午前10時からの一般予約に私と妻は2台のスマホと2台のパソコンを手元に臨みました。
10時になった瞬間、チケット大相撲のサイトは「アクセスが集中しています」の表示にページを進めることができません。電話予約サイトにダイヤルしても話中です。
「これはやばい」と思った時、妻がIGアリーナのサイトにアクセスするとうまくつながり座席を二つ確保することができました。このサイトはDアカウントを持つ人しか入れなく、競争率が低かったようです。
何はともあれ、今年も名古屋で相撲観戦できることになりましたが、この調子で人気が上がるといつまでそれも可能なのかわかりません。
関係ないけど
熱海富士を見ながら相撲には関係ないことを思いました。
「どうして熱海は静岡県なんだろう」
高い山や大きな川が県境になっていることが多い中、静岡と神奈川の県境は熱海の東、湯河原市街の西を流れる小さな川になっています。
私は初めてこの場所を訪問した時「えっ、これが県境」と驚いたことがあります。地図をみると伊豆半島の真ん中に沿って尾根があり、そこを県境とした方が自然だと思ったからです。そうなると熱海は神奈川県に属します。
丹那トンネルが開通するまでは東の方が交通の便がよかった街でありますし、どうした理由で静岡側に入ったのか不思議な気がします。
相撲には関係ありませんが、調査することが一つ増えました。
諸々雑感・気づき
・新十両宮の風も熱海富士のようにステップを踏んでいました。
・琴栄峰の仕切り時に見せる四股、足の上がる角度が大きく対空時間が長く、それだけで見ものであり拍手が湧き上がります。
・弓取り式を行う力士が伊勢ヶ濱部屋の聡の富士から、立浪部屋の空天海に変わりました。横綱照ノ富士引退と新横綱豊昇龍誕生に伴うものらしいです。キビキビとした空天海の動きに会場はモリアがていましたが、ベテランの聡の富士の姿がテレビで見られないのは寂しいです。
・枡席に座った外国人夫婦が「We Love URA!」と書かれたのぼりを両手で広げていました。ついにこういう時代が来たかと思いました。
・その宇良ですが、彼ほど投げられたり倒されたりした後も注目を集める力士はいません。でんぐり返しをしたり、大きく足を上げたりするからです。勝負がついた後も最後まで目が話せない力士。人気が出るはずです。
・七日目の解説に伊勢ヶ濱親方が出演されていました。小心者で慌て者の私は、「あの落ち着きが欲しい」と親方を見るたびに思います。
・ボーっと関取の取り組みを見ていると、土俵の上に国旗があるように見えてきます。赤と緑の締め込みの両力士の間に白い衣装の行事が立つと、明度は違いますがイタリアの国旗っぽくなります。今場所の対戦はありませんでしたが、嘉陽と獅子がぶつかればそのままウクライナの国旗です。私はそのようなことを考えながら相撲を見たりします。