山の舟
平成の市町村合併が進んだのは私が働き始めしばらくしてからだと思います。合併の形には二つのパターンがありました。一つは隣接する大きな街に飲みこまれれてその街の一部になる形、もう一つは合併の後にまったく新しい名前の街に生まれ変わる形です。
大学生の時からうどん目当てに頻繁に訪れていた香川県も合併により大きく自治体の数を減らしました。私が主に訪問していた地域は高松から西になりますが、そこにもかつては香川町や綾南町がありました。これらの自治体は今ではそれぞれ高松市と丸亀市の一部になっています。
一月前、私は妻と次男を連れてこの旧綾南町にある温泉施設へと行きました。讃岐うどんを食べ歩く間、お腹を減らすための時間です。
この「綾」という文字は私にとって特別な響きがあります。「綾南町」や「綾歌町」は私の讃岐うどん趣味の原点のような場所で、そこには「綾川」が流れています。この辺りは景色を含めて、私が香川県で一番いいなと思える場所です。
さて、今回はうどんの話ではありません。私は旧綾南町の温泉施設のサウナの中にいます。公共施設だけあって、信じられないような安い値段で利用できます。平日はデイセンターも兼ねているため、入浴客のほとんどは地元の人のようです。
外気浴はできませんが、サウナ室と水風呂と洗い場のイスを使ってセッションを繰り返していきます。最後のセットにしようと思い、サウナ室で温まっていると地元の常連らしき人が一人入室し、知り合いの室内のもう一人と会話を始めました。二人はともに70歳ぐらいでしょうか。
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